コロナの今、ひきこもるだけでは消極的になってしまうというのでお稽古事が人気だそうです。
ピアノやギター、バイオリンなど楽器を始める方が増えてるそうです。
もともと、お稽古事は子供が主体でするものでした。
ベビーブームの時代、鈴木の才能教育が盛んになってバイオリン教室は活気があって、
公団住宅と言われるところにお住まいの方もピアノを購入されてました。そして子供に習わせていました。
今はどうなんでしょうか、少子化で数年後には音楽大学でも定員割れになる予測も出ています。
私立大学などは学生集めに必至で、近年は海外特にアジアの留学生でなんとかやりくりしているようです。
そんな国の状態ですから子供の数も減って、当然習い事の教室も30〜40年前の高度成長時代の活気のある雰囲気とはちがっています。
この頃はバイオリンやピアノの先生も、大人の生徒さんも指導するようになりました。
大人になってから特に専門性の高いバイオリンやピアノを習うと言う事は、実はしんどいことと思います。
バイオリンやピアノは3歳や4歳から習うことが多いですね。
子供からお稽古事をさせる理由はなぜか考えてみました。
①子どもの自我が目覚める前に、ご飯食べたり歯磨きしたりするのと同じようになる感覚を子供時代に日常習慣化させる。
②楽器の習得には身体ができていくと同時に楽器を演奏する筋肉を子どもの時から作っていく。
③子ども時代の柔軟なアタマの時にいろんな経験をさせる。
④音楽に目覚めるまで習わせる。
こんな感じでしょうか。
これはどういうことを意味するのでしょう?
大人になってから始めるのは遅いのでしょうか?
一般的に、、遅いと言えば遅い、自分の経験から、、遅くないといえば遅くないです。
バイオリンに限って言えば、、この楽器の習得にはおそろしく時間がかかります。
パールマンが言いました。『若いうちは気がつかなかったことが今、分かってきたら、、自分は歳をとっていた』
声楽家などは若いうちは声もできていないし、音楽大学卒業時に完成している歌手は居ません。
とにかく音楽で楽器など習得するのにはものすごく時間がかかることなのです。乗り越えていかなければならない壁はいくつもあります。
大人から楽器を始めて、すごく大変なのになぜ大人からの教室が盛んなのでしょう?
大人は自分の意志で楽器を手にします。
まだ何も知り得ない3歳4歳の子供がバイオリンやピアノを習いたいと自主的に言う子供には未だ会ったことがありません。
かのベートーベンやモーツアルトでさえ父親の圧倒的勧めで天才教育を施したくらいですから。
ここが大切なところです。
自分の意志で自分が好きなことをする。
大人は自分の意志で始める事ができる。なんと素晴らしいことでしょう。確かに子供時代から指を動かすことは必要条件かもしれません。
身体が固まってしまう15歳や16歳からのスタートではバイオリンを肩に乗せて弾くことが自然になるまでにかなりの時間を要することでしょう。
一万時間の法則 というのがあります。一万時間その道で頑張ればやっとスタート地点に立てるという話です。
私はこれは実際に経験して本当だと思います。
有名なバイオリニストハイフェッツが1日に何時間も、、たとえば六時間や八時間楽器を弾かないと不安、またはテクニックが維持できないのなら
バイオリンはやめた方が良いと言ってます。
人生のある時期ものすごく練習が必要です。
実際、自分は学生時代は八時間も十時間も出来る時は弾いていました。
しかしながら日常の生活では音大の学生さんならいざ知らず、、社会人という立場になったら1日の中でいろんなことをしなければなりません。
私事で恐縮ですが、九州交響楽団に在籍していたときはその仕事、主にリハーサルと本番では楽器をさわってます。
だからいやおうなしにバイオリンが身体に馴染みます。
九州交響楽団は一年通じて約120回公演があります。地方オケでは多分こんなもんです。
それが10年で1200回、私は38年在籍しておりましたから約4000公演ステージで弾いてきました。
たぶんこれは身体を酷使していたと思います。でも、その引き換えにバイオリンを弾いたり支えたりする身体の筋肉は成長し続けました。
ただし育ったのはオーケストラ用の身体かもわかりませんね。中には身体が故障してしまう方もいました。
常々、言いますがバイオリンはほんと特に厄介な楽器です。
でも自由に操れるようになったらバイオリンと一生一緒にとても楽しい時間を過ごせます。
ニューヨークに勉強に行った際、先生のレッスンを受けに行った時、70代後半のご婦人がレッスンに来てらして、そのレッスンが終わるのを待っていました。終わった後、『先生にあのご婦人のレッスンの目的は何ですか?』先生に聞きました。そうしたら『自分で気に入ったビブラートができるようになりたいのよ』とのことでした。
ほんとうにいい話をお聞きしました。
イズタバイオリンの大人の教室に来られてる方々と同じお話です。
大人の教室の生徒さんたちの1番の目標曲は《パッヘルベルのカノン》を弾いてみたいという方が多かったです。
これがしたい、弾いてみたい、こんな合奏してみたい、モーツアルトとお話ししたい。。そういう希望って大切です。
子どもの時から身体作りで英才教育し、遊びたい盛りに遊ばず、突き指はお稽古の妨げになるからとボール投げもしたことないような子供。
音楽の世界しか知らない子供が大人になって大丈夫かしら?
親に言われて自覚が出るまで弾かせ続け、いつかの時点で自分のお稽古してきたバイオリンが偶然にも好きになって音楽大学に行き、その流れでプロになる人は多いように思います。
確かにバイオリン習得は大変だし、気まぐれに弾きたい時だけ弾いただけでは上達しません。習得方法はこれでよいのだろうかと、、思うことが時にあります。
しかし間違いなく、、イズタバイオリンの大人の教室の皆さんの合奏中の喜びに溢れたお顔を拝見し、ほんとうに嬉しそうに帰っていかれる。
『また次回もよろしくお願いします』と言って帰られる姿を見て、自分は『この講座の指導に来れて良かった』と思います。